2002.08.16版

JARL会費はどう使われているのか?

〜これでもまだ会費を払いますか?〜

JARL News 5・6月号に掲載されたH13年度決算により修正。
H13決算、H14予算共、本稿指摘の点が一層悪化した内容となっている。


JARLの会費は高い。

平均的な会員の場合、年に9回JARL Newsがきて、2ヶ月に一度30枚(1)弱のQSLが届く。これ以外の会員サービスとはほぼ無縁だ。開局してJARLに入会したものの\7,200は高すぎると辞めて行くのも、これでは当然と感じる。

(1)1700[万枚/年]/10.5[万人]/6[回/年]=27[枚/回]

JARL NewsとQSL転送に掛かる費用は、総支出の僅か23%(H13度)(2)だ。ほぼ全会員が享受する2大サービスに必要な経費は意外に少ない。にもかかわらず赤字が続くJARL。残る77%はいったい何に使われているのか? 

(2)H13総支出 893百万円
  内、JARL News 110百万円 QSL転送 95百万円

素人分析(3)の結果、私は次の2点が問題だと考えている。
 1.高すぎる間接・管理費
 2.終身会員制度

(3)私はコンテストが好きなためQSLを大量に受け取る。転送が年12回のときは送料だけで会費額を超える時期もあった。そのころは\7,200という額に不満は無った。しかし転送回数も枚数も減少してきたので、会費を払う価値があるかどうか素人分析を初めた。これがJARL財政に興味を持つようになったきっかけだ。
ちなみに、転送コストは大体\5.6/枚(H13実績)。年間1,300枚以上受け取ればQSL転送だけで会費の元を取れる。今もなんとか元は取っている。私が年会費を払う理由のはこのためだ。
だから、私自身は会費が高いと文句を言える立場ではない。が...

1.高すぎる間接・管理費

JARLの支出は決算書上、
 ・会員事業費
 ・刊行物
 ・管理費
の3項目に大きく分類されている。各支出は、ほぼ会員の減少に比例して減少しており、実際のその年度の収入に対する割合は、会員事業費は毎年ほぼ同じ、管理費は減少傾向だ。一見支出削減は順調と見える。

  H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14予算
会員事業費 1,003,595 64.2% 902,400 62.9% 811,176 63.9% 683,967 64.5% 579,399 61.9% 566,479 71.7% 527,303 80.6%
刊行物 202,624 13.0% 182,503 12.7% 174,220 13.7% 156,232 14.7% 172,052 18.4% 130,276 16.5% 56,529 8.7%
管理費 574,680 36.8% 463,474 32.3% 378,113 29.8% 318,958 30.1% 252,547 27.0% 197,035 24.9% 219,948 33.6%
合計 1,780,899 114.0% 1,548,377 108.0% 1,363,509 107.4% 1,159,157 109.3% 1,003,998 107.2% 893,790 113.1% 803,880 122.9%

%は正味収入(当期収入-繰越収入-会費(終身)積立預金取崩)に対する割合。
以下同様

詳しくは、
JARL B/S参照。

しかし、支出の内容を、
 1)直接事業費(事業に直接かかる経費)
 2)人件費
 3)管理・間接費用
 4)積立金
に分けてみると、前の2項は比率を下げてきている。しかし、管理・間接費用は年々その割合が高くなってきており、
H13度は46%に達している。H8,9年は30%以下だった。会員一人当りが負担する金額でも、管理・間接費用はこの5年間毎年約100〜300円増加している

  H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14予算
直接 直接事業費 669,401 42.8% 592,205 41.3% 503,447 39.6% 439,742 41.5% 351,377 37.5% 277,766 26.8% 263,768 40.3%
間接 人件費 517,698 33.1% 490,689 34.2% 420,036 33.1% 300,729 28.4% 263,643 28.2% 212,115 26.8% 207,871 31.8%
間接 積立金 131,378 8.4% 52,414 3.7% 32,695 2.6% 40,978 3.9% 26,281 2.8% 36,713 4.6% 31,555 4.8%
間接 管理・間接 462,422 29.6% 413,069 28.8% 407,331 32.1% 377,708 35.6% 362,697 38.7% 367,196 46.5% 300,686 46.0%
つまり、
 ・会員事業費と事務局人件費を削って会員サービスが低下
する一方で、
 ・間接・管理費の削減は収入の減少に追いついていない
ことがわかる。会員が減った割には、間接経費が減っていないというわけだ。

間接管理費で注目すべきは、会費収入が減少している中、増加あるいは削減割合が少ない勘定科目だ。正味収入に対する割合で見ると、

  科目 H9 H10 H11 H12 H13
H13
[千円]
H14
予算
会員事業費 機械化事務費 1.2% 1.8% 3.3% 4.5% 6.2% 49,336 5.2.%
  広報活動費 2.0% 3.3% 3.5% 4.4% 4.3% 33,627 6.5%
  設備機械費 0.9% 0.8% 0.9% 1.4% 1.3% 10,287 1.5%
管理費 選挙費 1.1% 1.2% 1.4% 1.6% 1.4% 11,421 2.2%
  理事会費 0.5% 0.4% 0.4% 0.6% 0.7% 5,652 0.6%
  評議会費 0.3% 0.5% 0.4% 0.5% 0.3% 2,495 0.3%
3大分類計 賃借費 4.5% 4.8% 5.2% 4.9% 5.5% 43,282 5.7%

会費収入が減少しているなか、比較的削減が容易な部類と思われるこれらの費用が、増加あるいは削減が進んでいない事は理解に苦しむ。真っ先に本来削減して、会費値下げの原資とすべきだ。特にこの数年で構成比が倍増している、機械化事務費、広報活動費、選挙費の3項目は問題だ。もし、この科目をH9年の構成比にもどせば、会員一人当り750円程度の会費値下げが可能だ。いったい、なぜこの項目は削減が進まないのか? 
また、他の項目についても優先順位をしっかり基準化して業務削減を進めれば、人件費・管理費含めてかなりの支出削減が可能ではないか?

組織面では、理事定数を削減(4)して意思決定の手間を減らし、連盟内の事務を工夫していけば、まだ間接費を削減できる筈だ。これらも会費の値下げの原資とすることができる。

(4)理事の定数削減と業務明確化について
意思決定者が大勢では、まとまるものもまとまらないのが世の常だ。
理事定数はH10に削減され19名となった。このときの会員数13万人に対しH13現在10万人。会員は77%に減った。理事定数もこの比率に合わせて14名程度まで削減すべきだ。毎年一割会員が減少している現状では、2年毎の選挙の際に2名ずつの定数削減が適当だ。
JARLの内情は漏れ聞こえる範囲でしか知らないが、諸問題の根源に理事会と事務局の組織的な欠陥があると感じる。たとえば、
・役員の職務分担(諸事業とJARL各課の担当)は明確なのか?
・各事業は正副会長と事務局で十分練られた上で理事会に諮られているのか?
・監事は機能しているのか?
これらを実行するだけでJARLは劇的に機能が向上すると思う。

2.終身会員制度

なんと吃驚、2002年1月のJARL理事会で前納会費制度の廃止が見送られた。これでJARL財政で指摘した問題がまた一年先送りにされたわけだ。このツケを払うのは年払会員だ。もし、前納制度がなかれば現在でも一人当り約6,300円(5)程度の会費で運営できる。前納制度の廃止で会員一人当り約900円の会費値下げが可能なわけだ。これから財務改善が進んでいくと会員一人当りに必要なコストはまだ減少していくだろうが、前納制度がある限り会費値下げは不可能だ。年払会員の払う会費が前納会員の維持費に補填利用されるだけだ。

(5)全納制度がない場合の会費は、
(会費収入+会費(終身)積立預金取り崩し金)/会員数で概算できる。H11-13までの試算すると
H11 (723+110)/126=6,611
H12 (649+100)/115=6,513
H13 (581+ 90)/106=6,330

3.まとめ

一つの目標として、年会費5,000円以下で運営できる様に改善を進めれば、JARL本来の機能のみに集中でき、現在僅か10%程度に留まる組織率の向上も可能ではないかと期待する。もう1度定款(6)に立ち帰り、不要不急の事業は見合わせて支出を押さえ、平均的な会員も納得して払える会費水準、すなわち前述の2大サービスに見合った金額まで値下げしなくては、JARLの将来はない。

年払会員が連盟財政を支える今後、一人でも多くの年払会員が会費の利用方法を厳しくチェックすべきと思う。自分の払う会費が適正に使われていないと判断すれば、不満の意思表示をするべきだ。改善されなければ無駄なお金を使う必要はない。退会すべきだ。年払会員の減少が加速すれば、数年のうちに連盟は事業を維持できなくなる。これが連盟を正常化するための唯一の圧力なのだ。

いろいろ問題を抱えているが、大好きなコンテストの主催団体なので、会員の為の組織として立ち直り、存続することを願う。

(6)JARL定款抜粋
第2章 目的及び事業
(目的)
第4条 本連盟は日本におけるアマチュア無線の健全なる発達を図り会員相互の友好を増進し併せて、内外の無線科学並びに文化の向上と発展に寄与することを目的とする。
(事業)
第5条 本連盟は、前条の目的を達するため次の事業を行う。
(1)国際アマチュア無線連合(TheInternationalAmateurRadioUnion,I.A.R.U.)の日本支部としての業務。
(2)諸外国のアマチュア無線団体との提携。
(3)アマチュア無線に関する調査及び研究。
(4)アマチュア無線に関する講習会、講演会、研究会、競技会等の開催。
(5)アマチュア無線に関する資料及び文献の収集並びに知識の普及及び広報活動。
(6)機関紙、アマチュア無線関係図書及び刊行物の発行、頒布及び斡旋。
(7)アマチュア無線に関する建議及び請願。
(8)交信証、受信証の転送業務。
(9)災害時の非常通信活動及びそのための訓練並びに非常通信協議会への参加。
(10)アマチュア無線局の無線設備等の適否認定。
(11)アマチュア無線従事者国家試験執行への協力。
(12)アマチュア局による電波障害等に関する調査及び指導。
(13)官庁及び公共団体の要請による本連盟の目的に沿う業務。
(14)功績の表彰。
(15)その他連盟の目的を達成するために必要な事業。

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