2001.07.05版
jh4utp は JARL会費の年払にこだわっている。

以前は毎月小包や綿入封筒で届くQSL送料だけでも年会費 \7,200 を超えていた。苦しい財政がわかっているだけに心苦しいという気持ちがあった。少しでも JARL の実質収入が増えるように年払をという気持ちもあった。一方では、JARLに所属してメリットがあるようなアマチュア無線活動を今後も続けていくかどうかという問題もあった。今のところ私にとってJARLの会費は、JARL主催コンテストに入賞したとき賞状をもらうためと、QSL転送費用に他ならない。すなわちコンテストに入賞せずQSL交換をしなくなれば会費は無駄ということになる。終身会費なら10年以上は会員サービスを享受しなければメリットはない。いままでは20年以上JARLに所属していたが、今後のことは気分次第で予想がつかないし、財務状況から考えて下手に終身会員になって途中で破綻したり会員条件が変わったら損である。

このような理由で毎年会費を払い込むかどうか判断することにしたのである。 それには\7,200の会費が有効に使われているかを知る必要があるため、会費払い込み前(たまたま5月の総会前)にはJARLの財政状態について素人分析をしている。

H13予算&H12決算偏 | H11決算偏 | H12予算偏 | JARL B/S


<H12決算 & H13予算編>

今年も会費振りこみ用紙が送られてきて程なくH13年予算の載った JARL News が届いた。

気になる終身会員積立取崩の額は、110百万円で、終身会員数X年会費の180百万円(@7,200x25千人)より少なく、以前のような赤字補填には使わる予定はないようだ。気になるのはマイナス45百万円の赤字予算となっている点だ(単年度)。
一方、会員一人あたりいくらの会費負担で社団法人が運営されているか終身会費の取り崩し分も含めて計算すると約6,400円/年となる(注1)。800円位の損になるが、これは寄付のつもりで今年も会費を支払い、H12の決算を待つことにした。

注1 (会費収入 561+終身会員積立取崩 110)/会員数 104千=6.4千円

そうこうしているうちに、JARLのH12決算の掲載された JARL News が届いた。

(単位:百万円) H8決算 H9決算 H10決算 H11決算 H12予算 H12決算 H13予算
単年度収入 1,876 1,583 1,608 1,233 1,010 1,036 893
単年度支出 1,780 1,548 1,363 1,159 1,040 1,004 938
繰越収支差額 -218 -182 +62 +74 +0 +106 0
終身会員積立取崩 313 150 339 110 160 100 110
終身会員積立残 1,445 1,300 963 854 694 755 655

H11,H12年度とも、予算と決算の差異も少なく、3年連続の単年度黒字であり、毎年の収支については非常によくなった。昨年の会費は無駄には扱われなかった様で一安心である。しかし、将来的な視野で見ると会員減少と終身会員という問題を抱えており、この対応いかんでは今後も会費を払いつづけるかどうかは保証の限りではない。

1.会員の減少

会員はほぼコンスタントに年間11,000人減少している。もしこの傾向が続くとH20年ごろから年払会員はいなくなり終身会員だけになってしまう。減少はH5の会費値上げから始まっているが、アマチュア局自体もこの頃から減少し始めている点が興味深い。

会員の減少はアマチュア局自体が減っているためである。だからしょうがない、では能がない。JARLにはアマチュア局のわずか12.2%(2001.3末)しか入会していない点に注目したい。1ポイント上昇できれば1万人の増加、すなわち毎年の減少分を補えるのである。しかし、実態は年々だいたい0.5%弱づつ下がっている。これは、平均的な会員が享受する会員メリットに対して会費が高いためもあろう。JARL News の発行もQSLの転送も減ってサービスが低下するなか、7,200円/年は益々割高と感じられ、会員減少に歯止めが利かない悪循環となっているのではないか。もし、無線LANやPLCなどのアマチュア無線を脅かす問題に十分に対応できなければ、なおさらである。間接経費である管理維持費をより削減し、会費を値下げすることが必要と考える。

2.終身会員制度の廃止

H13の予算の110百万円を取り崩しつづけると、財源がなくなるまで 755/110=6.8年 すなはちH20とかなり好転(延命?)してきた。終身会員制度の見なおしを行うための十分な時間を確保したといえよう。しかし、いずれ財源がなくなったときに終身会員をどうやって維持していくかという問題が解決したわけではない。
また、年払会員にとっては憂慮すべき状態であるので注意が必要である。H12決算ベースでは会員一人当たり6.4千円/年で社団法人運営がされている。つまり6.4千円程度の会費で現在の連盟は維持できるのである。年会費が7.2千円/年であることから、すでに終身会員に比べ年払会員への負担が増えていることを意味している。すなはちH13には年払会員が振りこむ7,200円の内、800円は終身会員を維持するために使われていくのである。終身会員と年払会員の不公平は是正が必要と考える。すなはち、終身会員制度の見なおしである。

会員減に伴い会費収入への依存度も年々上昇中であるが、この貴重な収入源が毎年1.1万人分づつ減っているわけである。さらに事業収入等もH5の養成課程JARD移管後から減少を続けている。終身会員積立金もH19ぐらいで底をつく。
・年払会員が減るが、終身会員の数は変わらず
・収入に対する年払会費の割合があがる
ということは、会員一人あたりの必要コスト以上に年払の会費は毎年割高になっていくとうことだ。これでは年払の会員は損をすることになる。そろそろまじめに考えてくれないと会費を払うのがばかばかしくなる日は近い。

3.まとめ

結果論でいえば終身会員制度は失敗であった。年払による運営を基本としていればこのような窮地にJARLは陥ることはなかったのである。また、膨れ上がった事業費や管理費の削減は会員減少についていくのがやっとという現状である。
しかし過去を悔やんでも問題は解決しない。この調子で財務の改善をより一層加速し、年払会費の値下げ→会員減の減速、の好循環を生み出すことが次の段階の重要な課題ではないかと考える。そのためにも、早急に
・終身会員制度の見なおし
・事業費・管理費のより一層の削減
による抜本的な財務構造の改善を願いたいところである。

JARL News の発行は減り、QSLの転送回数も減って(その転送も遅れがちのこのごろ)サービスが低下するなか、終身会員の経費を負担してまで会費を払うべきか、今も悩んでいる。終身会員制度を見なおし、終身会員と年払会員の不公平を是正に着手しないようであれば、私も近々1万人の1人とならないとも限らない。

《資料》

  会員 正員
@7,200
@10,800
家族会員
@3,600
准員
@7,200
H10.3 144千人 133千人 10千人 0.7千人
H11.3 133千人 124千人 8千人 0.6千人
H12.3 121千人 113千人 7千人 0.6千人
H13.3 110千人 103千人 6千人 0.5千人

<H11決算編>

JARLのH11決算が発表されたので今年も分析をした。

(単位:百万円) H7決算 H8決算 H9決算 H10決算 H11予算 H11決算 H12予算
単年度収入 1,746 1,876 1,583 1,608 1,242 1,233 1,010
単年度支出 1,855 1,780 1,548 1,363 1,242 1,159 1,010
累積赤字 -313 -218 -182 +62 0 +74 +30
終身会員積立取崩 30 313 150 339 247 110 160
終身会員積立残 1,752 1,445 1,300 963 716 854 556

H11決算報告は従来に比べると評価に値する決算となっている。

最もよい兆候は、H11の補正予算が組まれまれなかったことだ。従来は補正予算で終身会員積立金を増額して(一億前後の増額である)帳尻を合わせるという会計が行われていたので、やっと正常化への一歩を刻んだと評価できる。

評価すべき主なポイントは、支出削減とそれに伴う終身会員積立取崩の減少である。終身会員一人当たりの取り崩し額は、4.2千円/年と過去最低で良い兆候である。

このペースならば、財源がなくなるまで7.7年(注a)とかなり好転(延命?)してきた。終身会員制度の見なおしを行うための十分な時間を確保したといえよう。

 注a  854/110=7.7年

ただし年払会員にとっては憂慮すべき状態であるので注意が必要である。H11決算ベースでは会員一人当たり7.0千円/年で社団法人運営がされていることになる。年会費が7.2千円/年(注b)であることから、すでに終身会員に比べ年払会員への負担が増えていることを意味している。

 注b (会費収入 688+終身会員積立取崩 110)/正会員数 113千=7.0千円

これは終身会員と年払会員の不公平の是正が必要となってきたことを意味する。すなはち終身会員制度の見なおしである。

また、この調子で財務の改善を謀っていき、年払会費の値下げ→会員増、の好循環を生み出すことが次の段階の重要な使命ではないかと考える。

ぜひとも新理事の皆様には、早急に終身会員制度の見なおしによる抜本的な財務好転を願いたいところである。


<H12予算編>

(注意)
本稿はH11年度決算発表前のJARL News APRのH12予算案を元に書いた。
このためH11年度決算の内容を踏まえていないのでご注意願いたい。

H11までに比べると非常に改善されている。いまや累積赤字も解消したし、終身会員積立取崩の額もこの3年で最も低い。支出の削減もいままでにない努力の成果が見える。

さて、H11末の終身会費積立額は 710百万円。
H12予算ベースでいくと正会員一人あたり約7,200円/年の負担で社団法人運営がおこなわれている計算だ(注1)。とすると7.2K*25千人=180百万円/年で取り崩してあと4年で財源がなくなる(注2)。

 注1 (会費収入 604+終身会員積立取崩 160)/正会員数 105千=7.2千円
 注2  710/180=3.9年

財政再建対策としてよくでる案にJARL News のWeb化やQSL転送の受益者負担による財政対策がある。これは最大で27%((JN 140+QSL 143)/総支出1040)の削減効果がある。一見効果がありそうに思えるが、取り崩し額が27%減るだけなので、延命も27%で5年あまりで財源はなくなる。
(JN 140+QSL 143)が減れば取り崩ししなくてもやって行けるじゃないか、と勘ちがしてなならない。JN、QSLが別料金になって。\7,200/年払う方はかなり奇特な部類に入ると思う。JN、QSLが別料金になるならば、年払の会費も、終身会費積みたて金の取り崩しも減らさなければならないのである。
また、JARLの支出のその他の73%についいても会員規模に合わせた水準に減らすことは重要である。努力の成果は支出減という形で出ている。ただ、毎年一万人の会員が減少しているため、今後も一層の経費削減努力が必要である。

以上の現状を認識した上で、JARLの存続を望むならば以下の選択肢が考えられる。

(1)終身会員制度の廃止
現在終身会員の皆さんには罪はないが、この制度があるかぎり近い将来JARLの財源はそこを尽く。まだモトを取っていない会員差額を払い戻すにしても来年にはその財源さえも確保できない恐れがある。

(2)会館積みたて金の取り崩し
JARLには11億円の会館建設積立預金がある。現在郵政省の指導で目的外の取り崩しはできないが、これを取り崩せば1100/180=6年の延命効果が期待できる。これは問題の先延ばしである。全て取り崩したのちには再び同じ問題に直面することになる。

(3)会費の値上
現在一会員当たり約7,200円/年の負担で運営できているので、会費の値上げは年払会員へのしわ寄せとなる。私はこの時点で多分会費支払いを停止すると思う。年払会員減は終身会員比率を押し上げ財政を一層悪化させることになる。

JARLの存続を前提とするなら、(2)、(3)では無理があることがわかると思う。抜本的な解決は(1)であるが、残された時間はすくない。

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