JM4UJY vs JH4UTP '98 全市全郡編

〜 1kw と 200w は、どう違う? (国内編 その2)〜


1Kwと200wでスコアにどの位差がつくのか? '98 XPO での比較に続き '98全市全郡コンテストでもJM4UJY 田中さんにご協力頂いて考察を行ってみました。

田中さんは、同じ岡山市内の山の上から1kwで運用されています。同じ市内ですし、入賞経験豊富な田中さんとの比較なら、設備の差がスコアにどのくらい影響するのかを比較できるのでは、と考えました。

まずは、スコアと設備の比較表を見てください。

 
JM4UJY JH4UTP
max 1kw 標高約400m max 200w 標高約0m
MHz QSO MUL ANT
3.5 319 259 IV
7 398 307 IV
14 161 136 4el
21 101 90 5el
28 36 35 5el
50 104 92 8el
144 0 0 -
430 0 0 -
1200 0 0 -
total 1119 919 1,028,361
MHz QSO MUL ANT
3.5 236 189 R-DP
7 520 372 R-DP
14 50 47 4el TryBnder
21 48 44 4el TryBnder
28 42 44 4el TryBnder
50 32 30 6el
144 9 9 GP
430 15 11 GP
1200 1 1 GP
total 953 743 708,079
 
XPOでは電力の差があまり出ませんでしたが、全市全郡では166QSO(17%),176マルチ(23%)もの差がつきました。3.5/7Mhzだけを合わせて比べると (ここだけ合わせて比較というのもちょっと強引ですが...hi)
  UJY UTP
QSO 717 756
マルチ 566 561

で良い勝負となっています。しかし、14/21/50Mhzでは大差がつきました。

しかし、はたしてこの差は電力の差なのでしょうか、それともロケとアンテナの差なのでしょうか? まぁ、すべてで差がついているような気もしますが、次の1時間毎のブレークダウンでもう少し詳しく比較してみましょう。

 
JM4UJY cw 459
Mhz 21 22 23 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
3.5   42 66 14 9 52 37 14 17                             68 319
7       1             18 68 5     77 75 35 6     43 70   398
14                   26 10   45 20 13     18 1   11 17     161
21       37 6               8 9           12 29       101
28                     9                 17 10       36
50 5                         41 29       14 15         104
144                                                 0
430                                                 0
1200                                                 0
5 42 66 52 15 52 37 14 17 26 37 68 58 70 42 77 75 53 21 44 50 60 70 68 1119
 
JH4UTP cw 489
Mhz 21 22 23 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
3.5     39 44 42 58 14 20                             3 16 236
7 6 11               62 50     20 63 39 56 37 32   46 49 44 5 520
14   1 2                 29 10               7 1     50
21 1                     6 10             25 6       48
28 3                     10 11           1 15 2       42
50 13 7 1         4           6                   1 32
144 4 4                       1                     9
430 2 5         1             1         3         3 15
1200                           1                     1
29 28 42 44 42 58 19 20 0 62 50 45 31 29 63 39 56 37 36 40 61 50 47 25 953
では、バンド別に見てみましょう。

3.5MHz局数はUJYが勝っていますQSOレートはほぼ互角のようです(注)。このバンドでは電力による差は見られないといえそうです。といいたいところですが、実は私は最後の20時台は3.5Mでrunしたかったのですが、大混雑ではじき飛ばされちゃいました。一方UJYは1Kwの力を存分に発揮してSSBで68QSO/hという見事なフィニッシュを飾っています。
 (注)UJY:319QSO/約8h=30QSO/h, UTP:236QSO/約6h=39QSO/h

7MHz:局数はUTPが勝っていますが、QSOレートはUJYが勝っています(注)。1h毎のレートを比較しても、UTPが良くて50〜60QSO/hなのに対し、UJYは70QSO/h以上を3回マークしています。実際、UTPはXPO程レートがあがらずイライラしながらの運用でした。 
 (注)
UJY:398QSO/約6h=66QSO/h, UTP:520QSO/約11h=47QSO/h

やはり、全市全郡くらい参加者が多くてバンドが混雑してくると1Kwが俄然有利となるようです。電力の差はスコアの相関関係はバンドの込み具合次第、すなわちQRMで混雑したバンドでレートをあげるにはやはり電力が大きい方が有利のようです。

14/21/50MHz:こちらもXPOと同様です。UJYはGW・Scで、ロケ・電力・モノバンド八木の力を存分に発揮して能率よくQSOを稼いだ様子が伺えます。正規のEs伝播で日本の端っこしか聞こえないコンディションでは、GW・Sc中心にならざるを得ずやむをえないところでしょう。
私が同じシャックから2ndオペとして運用した経験では、Scの場合、ベアフットではパラパラとしか呼ばれないのに、1Kwにしたらパイルになる、くらいの差があります。

28MHz/144〜1.2GHz:サンプルが少ないので考察からは除外します。

JARL4大のような参加者の多いコンテストになると、ハイパワーの力の差を見せ付けられる結果となりました。QSOの差こそ16%で200wと1Kwにしては少ないように見えますが、こうして細かく分析していくとこの差を埋めるのはなかなか難しそうです。

ということで、ごちゃごちゃと書いてきましたが、結論はごく当たり前な内容であります。

混雑したバンドでは強い信号が有利(信号が目立つ、QRMよけになる)。
コンディションの悪いときは強い信号が有利(信号が目立つ、遠くまで飛ぶ)。
100wと200wでは差を感じないが、1Kwと200wでははっきりとした差がある

裏を返せば、大混雑でQRMの渦となっていない場合や、コンディションが良く正規の伝播が利用できる場合(またはローケーションが良くグランドウェーヴが中心の場合)は、電力の差を気にせず闘うことが出来るともいえます。こうした戦略もまた面白いのではと思います。

最後に、快くデータの提供に応じていただいた JM4UJY 田中さんに重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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